☑️ auペイメントとauフィナンシャルサービスが合併し新体制へ移行
☑️ 2027年度以降にau PAYアプリをウォレット化しAIエージェントを実装
☑️ 中小事業者向け次世代決済プラットフォーム「NESTA mobile(仮称)」を2027年春提供
2026年7月1日、KDDIグループにおける金融事業の中核を担うauペイメントとauフィナンシャルサービスが合併し、「新生auフィナンシャルサービス」が始動しました。両社は決済事業戦略の一元化と意思決定の迅速化を図り、市場の急激な変化に対応する体制を構築します。
2026年6月30日に開催された合併記者発表会では、新会社の代表取締役社長に就任した長野敦史氏が登壇し、合併の背景や今後の成長方針、そして2027年に向けたサービス統合のロードマップを説明しました。
キャッシュレス市場の浸透と顕在化する課題
合併の背景には、テクノロジーの進化とキャッシュレス市場の構造的な変化があります。経済産業省の算出によるキャッシュレス決済比率の目標(2025年で58.0%)に向けて、クレジットカードやコード決済を中心に市場全体の普及は順調に推移しています。市場はすでに「普及フェーズ」から「浸透フェーズ」へと移行しました。
一方で、サービス提供側の視点からは、消費者と事業者の双方に新たな課題が顕在化していると指摘しています。消費者は、乱立する決済手段の使い分けに疲弊し、店舗ごとに異なる決済方法を選択する手間が生じています。アカウント決済、コード決済、カード決済と手段が増加したことで、体験が分断されているのが実態です。

また、事業者側、特に中小事業者や個人事業主にとっては、キャッシュレス対応に伴う端末導入や維持コスト、煩雑なオペレーションが重荷となっています。キャッシュレスを導入したものの、資金繰りや集客など、店舗運営に関わる本質的な悩みを解決するには至っておらず、付加価値を実感しにくい状況が続いています。
さらに、KDDIグループの中期経営戦略でも触れられている通り、社会インフラとしてAIが急速に浸透し、「AIを使う時代」から「AIが当たり前になる時代」へと移行しつつあります。業務の効率化が進む半面、長期的にはサービスのコモディティ化(均質化)が懸念されており、AIでは代替されにくい独自の体験価値をどう創出するかが、今後の競争優位性を左右するフェーズに入っています。
新戦略コンセプト「Rewire(つなぎ直す)」
新生auフィナンシャルサービスは、これらの課題に対応するため、今後の戦略コンセプトとして「Rewire(つなぎ直す)」を掲げました。決済事業を基盤としつつ、分断されていた体験を再構築し、お客さまの心に響く体験を届けることを目指します。

具体的には、「お客さまとの関係をRewire」「加盟店さまとの関係をRewire」「くらしとの関係をRewire」という3つの軸で、サービスとシステムの統合・拡張を進める方針です。
お客さまとの関係をRewire:2027年度以降のウォレット構想
消費者向けの最大の取り組みが、既存の「au PAY アプリ」の抜本的なリニューアルです。2027年度以降、同アプリを一人ひとりの支払い方法や資産を統合管理する「ウォレット」として再構築し、各種機能の入り口と位置づけます。

再構築されるウォレットでは、以下の機能群が統合される予定です。
- 決済・ファンドソース:コード決済、タッチ決済、カード決済に加え、プリペイド、デビット、クレジットの残高管理をシームレスに連携。
- 金融サービス:銀行口座の照会、資産運用、さらに将来的な展開を見据えた次世代金融(Web3.0)領域のサービス。
- ライフサポート:ポイント管理、ヘルスケア・保険、エンターテインメント関連のサービス連携。
このウォレットの核となるのが、独自の「パーソナルAIエージェント」の実装です。KDDIグループやauフィナンシャルグループが保有する生活データとAIを掛け合わせることで、顧客一人ひとりに寄り添った最適な提案やサポートを行う仕組みを構築します。

長野敦史氏は質疑応答の中で、AIエージェントの役割について「純粋な金融だけを手掛ける会社に比べ、通信や生活に関わる様々なデータを持っていることが強みになる」と説明しています。具体的な機能は検討中としながらも、顧客のライフステージや日常の行動履歴に応じた、ファイナンシャルプランナーのような伴走型のサポートを視野に入れている見方を示しました。
加盟店さまとの関係をRewire:次世代決済PF「NESTA mobile」
中小事業者や個人事業主が抱える課題に対しては、次世代決済プラットフォーム「NESTA mobile(仮称)」を2027年春にリリースする予定です。これは、事業者が普段使用しているスマートフォンをそのまま決済端末として活用できるようにするサービスです。
単なるキャッシュレス決済の提供にとどまらず、事業者の「経営サポート」や「事業成長」に貢献する機能を順次拡張していく計画です。
- 資金繰り支援:売上金の早期入金や柔軟な資金調達手段の提供。
- 集客サポート:au PAYユーザー基盤を活用した来店促進やクーポン配信機能。
- DX・業務効率化:専用端末を導入することなく、スマホアプリ上で完結する管理機能。
長野氏は、激化する決済代行領域での差別化要因として、「通信会社グループの強みを活かし、毎日手にするスマホを入り口にしたサポート機能を提供できる点にある」と述べています。専門的な知識や複雑な仕組みが不要で、小規模な店舗でも手軽に導入できる設計を目指しています。
くらしとの関係をRewire:異業種パートナーとの共創
決済という行為は、独立して存在しているわけではありません。事前に商品を「探す」「比べる」といった行動があり、決済後には商品・サービスを「使う」「シェアする」という一連の体験が連なっています。
新生auフィナンシャルサービスは、自社のリソースだけでこのすべての体験を網羅するのではなく、業界を超えたパートナー企業(モビリティ、小売・EC、不動産、飲食、ヘルスケア、エンタメ、教育など)との共創によって、生活全体の体験価値をつなぎ直すアプローチを採用します。データ基盤とAIエージェントを介してパートナー企業とフィードバックのサイクルを回すことで、決済領域にとどまらない新たな価値の創出を長期的な目標としています。
2030年に向けた財務目標と成長戦略
合併する2社の2025年度の単純合算実績は、売上高1,773億円、営業利益272億円に達しています。2014年のau WALLET構想始動から12年をかけて、au PAY会員数4,042万、au PAY カード会員数1,082万(うちゴールド会員200万超)という巨大な顧客基盤を構築してきました。

長野氏は、この基盤をベースに、2030年に向けて売上高・営業利益ともにCAGR(年平均成長率)2桁の成長を継続的に目指す方針を明らかにしました。成長を牽引するドライバーとして、消費者向けのカード発行事業(イシュイング)と事業者向けの加盟店事業(アクワイアリング)の両輪を強化していく戦略です。
連携強化の第一歩:即時発行とオートチャージ特典の拡大
2027年を見据えた中長期戦略と並行して、合併と同日の2026年7月1日より、既存サービスにおける「au PAY」と「au PAY カード」の連携強化策も実施されます。
1. au PAY アプリからの「au PAY カード即時発行」開始
au PAY アプリ上でクレジットカードの申し込みを完結させ、最短数分で審査を完了する機能の提供を開始しました。カード本体の到着を待たずに、au PAY残高へのチャージやネットショッピングでの利用が可能となります。申し込みからオートチャージの設定まで、一連の導線がシームレスに行えるUI設計を取り入れています。

2. 「オートチャージ特典」の対象拡大
これまで年会費11,000円の「au PAY ゴールドカード」会員のみに提供されていた「ポイントアップリワード(オートチャージ特典)」を、年会費無料の「au PAY カード」会員(au、UQ mobile、povo1.0契約者)にも拡大適用します。
所定の条件(auじぶん銀行の口座設定、auでんきの支払い設定、家族カードの利用、ETCカードの利用など)の達成状況に応じて、オートチャージ金額に対するPontaポイントの還元率が変動します。

- au PAY ゴールドカード:最大5%還元(au PAY通常利用分の0.5%を合わせ、合計最大5.5%)
- au PAY カード:最大1.5%還元(同通常利用分と合わせ、合計最大2.0%)
今後の実務で残る確認事項
今回の合併発表は、経営統合の意義と中長期的なビジョンの共有が主眼であり、具体的なサービス仕様やシステム統合については、いくつかの未定事項が残されています。
質疑応答において、基幹システムの統合に関する見通しを問われた長野氏は、「現段階でau PAYとau PAY カードのシステム統合は予定しておらず、独立したシステムとして稼働する。ただし、合併に伴う共通化・効率化できる領域については今後検討していく」と説明しています。
また、暗号資産やステーブルコインを扱う「Web3ウォレット」の展開可能性については、「現状でもポイント運用機能の中で暗号資産コースを提供しているが、今後の詳細な展開についてはKDDIとコインチェックの動向も含めて検討していく段階」と述べるにとどまりました。
2027年度以降に予定されているau PAYアプリの大型リニューアル(ウォレット化)や、法人向けプラットフォーム「NESTA mobile」の商用化に向けて、既存のアプリのUI/UXがどのように段階的に移行していくのか、またAIエージェントの具体的な機能要件がどのように策定されるのか、今後の仕様公開が待たれます。
発表日時: 2026年6月30日
関連URL: https://www.aufs.co.jp/special/
