☑️ AIが代理購入する新経済圏のインフラ整備
☑️ OpenAIと共通規格ACPを開発し公開
☑️ 2030年に750兆円市場へ成長と予測

AIエージェントが購買を代行する750兆円市場の到来
Stripeは、AIエージェントが消費者の代理として商品の探索から購入までを実行する「エージェンティックコマース(Agentic Commerce)」の普及に向けた取り組みを強化しています。同社は、この新しい商取引形態が2030年までにグローバルで約5兆ドル(約750兆円)規模の市場へ成長すると予測しており、小売業者の75%が2026年までにAIエージェントへの対応が競争上不可欠になると認識しているとの調査結果を示しています。
従来、消費者は検索エンジンを通じて商品を自ら探し出し、各ECサイトへ移動して購入手続きを行っていました。これに対し、エージェンティックコマースでは、消費者がチャット形式のAIエージェントに対話でニーズを伝え、AIが最適な商品を提案し、消費者の承認を得て決済までを代行します。

Stripeのダニエル・ヘフェルナン代表取締役は、検索エンジン最適化(SEO)から、AIによる回答生成への最適化(AEO: Answer Engine Optimization)や生成エンジン最適化(GEO: Generative Engine Optimization)へと、デジタル経済のパラダイムシフトが起きていると説明しています。消費者の50%が過去1年間ですでに生成AIのサポートを受けて購買決定を行っているとのデータもあり、購買行動の変化が急速に進んでいることが背景にあります。
安全な決済を実現する「ACP」と統合管理「ACS」
この新しい商取引を支えるため、StripeはOpenAIと共同開発したオープン標準プロトコル「Agentic Commerce Protocol(ACP)」を2025年9月に公開しました。ACPは、多数のAIエージェントと販売事業者が共通の言語で取引を行うための規格です。
ACPの核心となる技術が「Shared Payment Tokens(SPT)」です。これは、購入者のクレジットカード情報などの決済データをAIエージェントに直接渡すのではなく、Stripeが発行したトークン(暗号化された記号)として共有する仕組みです。これにより、AIエージェントは決済情報そのものには触れずに注文リクエストを行い、販売事業者は受け取ったトークンを用いてStripe経由で決済を処理できるため、セキュリティと利便性が両立されます。
さらにStripeは、企業が複数のAIエージェントに対して効率的に商品を展開できるソリューション「Agentic Commerce Suite(ACS)」も提供しています。ACSを利用することで、販売事業者は個別のAIエージェントごとにACPを実装する必要がなく、既存のStripeとの接続を活用して、OpenAIのChatGPTやMicrosoftのCopilotなど、複数のプラットフォームへ一括して商品カタログを連携し、販売を開始できるとしています。
2026年1月には、Microsoft Copilot内での新たな購入体験「Copilot Checkout」の支援も発表されており、米国のCopilotユーザーはチャット画面から離れることなく、Etsyなどの加盟店から商品を購入可能になっています。
日本企業の現状とインフラ刷新の課題
日本市場においても、エージェンティックコマースへの関心が高まっています。Stripeによると、日本のビジネスパーソンの72%が日常的に生成AIを使用しており、Stripeへの新規加盟店登録の約10%がChatGPT経由で流入している実績があります。
しかし、日本企業の対応状況にはばらつきが見られます。Stripeのソリューションアーキテクトである安部総平氏は、一部の先行企業ではトップダウンで専門チームを組成し対応を進めているものの、多くの企業では既存のEC基盤(レガシーシステム)がAIエージェントとの連携に対応できていないと指摘しています。具体的には、商品カタログや在庫情報を外部のAIエージェントへリアルタイムに提供する仕組みが整っていないことや、決済インフラの老朽化が課題として挙げられています。
Stripeは、ACSを通じて商品情報の連携や機械可読なチェックアウト機能を提供することで、こうした技術的ハードルを下げ、日本企業のAIコマース対応を支援する方針です。今後は、ブラウザ上で自律的に動作して購入を行う「ブラウザエージェント」や、広告内での直接購入など、多様な形態への進化が見込まれています。
