☑️ 総務省が携帯電話契約時の本人確認手法を厳格化する省令改正案を公表
☑️ 精巧な偽造身分証による特殊詐欺を防ぐためICチップ読み取りを原則化
☑️ 2026年3月14日から4月13日までパブリックコメントを実施
情報通信行政を管轄する総務省は2026年3月13日、「携帯電話不正利用防止法(携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律施行規則)」の一部を改正する省令案を公表し、意見募集を開始したと発表した。電話を用いた特殊詐欺の被害が深刻化するなか、携帯電話契約時の本人確認手続きを厳格化し、マイナンバーカードなどのICチップ(半導体集積回路)に記録された情報を読み取る方法へと原則移行する方針を示している。
偽造身分証による特殊詐欺の抑止へ向けた背景
近年、特殊詐欺事件において携帯電話が犯行ツールとして悪用されるケースが増加傾向にある。総務省によれば、犯行に利用された携帯電話の契約手続きにおいて、目視では一見して判別できないほど精巧に偽変造された本人確認書類が悪用されている実態が確認された。
こうした状況を受け、政府が2024年6月21日に閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」や、「ICTサービスの利用を巡る諸問題に対する利用環境整備に関する報告書」において、対面での契約締結時における本人確認手法の見直しが提起されていた。従来の券面の目視確認に依存した手法から、より確実なデジタル技術を活用した手続きへの転換が急務となっている。
今回の省令改正案は、これらの政府方針を踏まえ、携帯音声通信事業者に対して、対面および非対面での携帯電話契約時に、本人確認書類に組み込まれたICチップの情報を読み取ることを原則とするよう求める内容となっている。
マイナンバーカード等のICチップ読み取り原則化と書類定義の刷新
改正案では、本人確認に用いる書類の定義や確認手順が大幅に刷新された。新たに「写真・半導体集積回路付き本人確認書類」という定義が設けられ、氏名、住居、生年月日、写真の情報が記録されたICチップを内蔵する書類が主な対象として規定されている。具体的には、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書、一定の要件を満たす旅券などが該当する。
自然人との契約締結においては、主に以下の確認方法へと再編される。
| 契約手続きの形態 | 新たな本人確認方法の要件 |
|---|---|
| 対面契約 | 本人または代表者等から提示されたICチップ付き書類の情報を直接読み取る |
| 非対面契約(オンライン) | 通信事業者が提供するソフトウェアを通じ、ICチップ情報の送信を受ける |
| 郵送による補完的手続き | 転送不要郵便物等として契約関連文書を送付し、居住実態を確認する |
ICチップを持たない書類や、写真が組み込まれていない書類(写真なし半導体集積回路付き本人確認書類など)を用いる場合は、書類の提示を受けた上で、記録されている住所宛てに携帯音声通信端末設備や契約関連文書を書留郵便等による「転送不要郵便物等」として送付する厳格な補完措置が義務付けられる。
「特定事項伝達型本人限定受取郵便等」の要件変更と海外転出者への対応
非対面での端末配送等に関わる郵送手続きの規定も見直される。従来は、名宛人から写真付き本人確認書類の提示を受けて配達を行っていた「特定事項伝達型本人限定受取郵便等」の要件について、郵便配達員が名宛人からICチップ付き本人確認書類の提示を受けるとともに、ICチップに記録された氏名、住居、生年月日、写真の情報を読み取る措置を講じるよう要件が変更された。
これにより、販売窓口だけでなく、端末の配送業務を担う事業者においても、確実なIC情報の読み取りプロセスが要求される仕組みとなる。
また、住民基本台帳法の適用を受けない者や国外転出者に対する規定も細分化されている。対象者から特定の書類の提示を受けたうえで、記載された住居宛てに端末設備等を転送不要郵便物等として送付する手続きが明文化され、居住実態の確認が強化された。
代表者・法人の確認および譲渡・貸与時プロセスの厳格化
法人契約や代理人による契約(代表者等の本人確認)においても、同様の厳格化措置が適用される。法人契約の実務において、代表者等からICチップ付き本人確認書類の提示を受け、記録事項を読み取る手続きが求められる。ICチップ情報を有しない書類の場合は、書類上の住所に対する転送不要郵便物等の送付による所在確認が必須となる。
さらに、名義変更を伴う「譲渡時本人確認」や、端末の「貸与時本人確認」のプロセスについても、ICチップ情報の読み取りやソフトウェアを用いた情報送信を原則とする条文へと改められた。「みなし契約者」に対しても、書面送付などで相当の期間を定めてICチップ付き本人確認書類の提示を求める規定が追加されている。
契約締結後における情報の取り扱いについても規定が整備された。通信事業者および媒介業者(販売代理店)は、役務提供契約が終了した日から3年間にわたり、読み取ったICチップ情報や特定電磁的記録の情報を本人確認記録と関連付けて保存する義務を負う。
パブリックコメントの実施と今後のスケジュール
総務省は、今回の「携帯電話不正利用防止法」施行規則の一部改正案に対し、2026年3月14日から同年4月13日までの期間、広く一般からの意見募集(パブリックコメント)を実施する。寄せられた意見を踏まえた上で、速やかに省令の改正手続きを進める計画である。
通信業界全体において、店舗に配置するICカードリーダーの導入や、オンライン本人確認(eKYC)システムの改修といった運用体制の整備が急ピッチで進むことが想定される。
今後の競争環境への影響
今回の法令改正は、通信インフラの安全性を高める一方で、携帯電話販売の現場における業務フローに多大な影響を与える。店舗での対面販売やオンライン手続きにおいて、マイナンバーカード等のICチップ読み取りが必須化されることで、システムの改修コストや専用端末の導入負担が各通信事業者および販売代理店にのしかかる。また、ICチップ付きの身分証を所持していない顧客や、操作に不慣れな利用者に対する例外対応のプロセスが煩雑化することも予想される。迅速かつ正確な本人確認システムを構築できた事業者が顧客体験の面で優位に立つ可能性があり、制度改正に伴う運用ハードルをどうクリアするかが今後の焦点となりそうです。
発表日時: 令和8年3月13日
関連URL: https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban18_01000276.html
関連URL: https://www.soumu.go.jp/main_content/001060447.pdf
