☑️ KDDIがStarlinkと自社閉域網をインターネットを介さずに直接接続する法人向けサービスを提供
☑️ サイバー攻撃のリスクを極小化し災害時における金融機関の決済システムや勘定系の維持を担保
☑️ スマートフォンと衛星の直接通信サービスをIoTデバイスに拡張し社会インフラの遠隔監視を強化

2026年4月23日、KDDIはSpaceXの提供する衛星ブロードバンド「Starlink Business」と自社の法人向け閉域ネットワークサービスを接続した、国内初となる高セキュアな衛星通信サービスを4月30日より提供開始すると発表しました。併せて、スマートフォンと衛星が直接通信する「au Starlink Direct」をIoTデバイスにも拡張する取り組みを同日に開始しています。
金融インフラにおける災害時の通信途絶リスクと課題
近年、企業のBCP対策や通信インフラが脆弱なエリアにおいて衛星通信の導入が進んでおり、KDDIも2022年から法人や自治体向けにStarlinkの提供を進めてきました。しかし、金融機関や官公庁、医療機関といった極めて機微な情報を扱うセクターにおいては、これまでの衛星通信のネットワーク構造に課題が残されていました。
従来の衛星通信は、通信経路の一部においてインターネットを利用するアーキテクチャが前提でした。そのため、顧客の口座情報や取引履歴、マイナンバー情報などにアクセスする際、DDoS攻撃をはじめとするサイバー攻撃の標的となるリスクや通信の安定性に対する懸念があり、決済業務や勘定系システムの中核業務に衛星通信を直接組み込むことには一定の制約が存在していました。
インターネットを介さない「閉域網×衛星」の論理構造
今回の新サービスでは、Starlinkの衛星通信網とKDDIの広域仮想ネットワーク「KDDI Wide Area Virtual Switch(KDDI WVS)」を直接連携させます。
具体的には、Starlinkの低軌道衛星(高度約550km)から地上の受信局へ到達したデータを、通常のインターネット回線へルーティングさせることなく、直接KDDIのネットワークへ引き込みます。これにより、企業・団体のイントラネットと端末間の通信経路からインターネット接続を完全に排除した「閉域網」を構築します。
- ネットワーク構成: Starlink Business端末 ⇔ 衛星 ⇔ 地上局 ⇔ KDDIの閉域ネットワーク(KDDI WVS) ⇔ 企業の社内ネットワーク
- 通信仕様: 従来の静止衛星の約65分の1の距離にある低軌道衛星を活用し、下り最大220Mbpsの高速通信と低遅延を実現

金融機関のBCP対策における従来モデルとの差分
金融機関にとって、災害時や地上インフラの途絶時における決済基盤の維持は至上命題です。従来のインターネット経由の衛星通信と、今回の閉域網接続サービスにおける実務上の差分は以下の通りです。
| 比較項目 | 従来の衛星通信(インターネット経由) | 閉域網でのStarlink接続サービス |
|---|---|---|
| セキュリティ | サイバー攻撃のリスクが構造上存在 | 閉域網での直接接続により外部からの攻撃リスクを極小化 |
| 金融機関での活用 | 情報収集や社内連絡など非機密業務が中心 | 勘定系システムへのアクセスや決済処理など中核業務へ適用 |
| 通信の安定性 | インターネット網のトラフィック影響を受ける | 自社網を通じた帯域確保による安定的な通信 |
| 災害時の運用体制 | 機微情報を扱う業務は制限を伴う場合がある | 被災した支店からでも通常と同等のセキュアな取引業務を継続 |
この構造変化により、店舗や拠点が物理的に孤立した場合であっても、Starlinkアンテナを稼働させることで、本店と同一レベルのセキュリティ要件を満たしながら顧客対応や決済業務の継続が可能となります。
サービス利用における要件と「au Starlink Direct」のIoT拡張
本サービスは国内の陸上利用に限定されます。また、閉域網接続サービスは既にKDDI WVSを利用している環境へ付帯する形での提供となり、月額基本料はKDDI WVSの回線利用料(14万円)を含め、1回線あたり25万円程度での提供が想定されています。最終的な利用料金は、接続構成や回線数により個別見積もりとなります。
また、KDDIは法人向けビジネスのさらなる展開として、2026年4月23日より「au Starlink Direct for IoT」の提供も開始しました。これは、スマートフォン向けの直接通信サービスをIoT用のデータ専用通信モジュール(020番号)に拡張する国内初の取り組みです。
圏外エリアに点在する電気・ガス・水道のスマートメーターによる遠隔検針や、山間部における自然災害の兆候検知など、少量のデータ通信を広範囲かつ定常的に行う用途において、物理的な回線敷設や巡回スタッフに依存しない自律的なシステム運用を実現します。

金融・決済システムの強靭化に向けた構造変化のマイルストーン
インターネット接続をバイパスして衛星と自社閉域網を直結する今回の機能実装は、これまでセキュリティ要件の壁によって衛星通信の本格導入に慎重であった金融セクターにおいて、明確なブレイクスルーとなります。
有事の際にも「決済システムや勘定系データを外部に一切晒さずに通信環境を復旧できる選択肢」が確立されたことは、金融機関の災害対策の前提条件を大きく書き換えるインパクトを持ちます。さらに、IoTデバイスとの直接通信解禁により、遠隔地の無人決済端末や自動機(ATM等)の監視体制にも衛星回線が組み込まれる論理的な道筋が生まれました。
各金融機関がこの物理的・論理的な差分を自社のシステム構成要件に組み込み、実地での運用検証を進めることで、日本の金融インフラ全体の強靭性が底上げされる確かな一歩となります。
発表日時: 2026年4月23日
関連URL: https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-990_4442.html
関連URL: https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-990_4444.html
