☑️メルコインとコインチェックが連携しメルカリアプリ内での取引銘柄を15種類へ拡大
☑️改正資金決済法を背景にコインチェックが提供する「CaaS」をAPI連携で組み込んだ
☑️UIを刷新してコレクション感覚を提供しつつ裏側の資産管理やセキュリティを堅牢化

メルコインとコインチェックは2026年6月8日、暗号資産取引サービスに関する新機能発表会を共同で開催し、同日からメルカリアプリ上でコインチェックが取り扱う12銘柄を新たに追加し、計15銘柄の取引機能を提供開始したことを発表しました。これまではビットコインなど3銘柄に限定して初心者のハードルを下げる戦略を採っていましたが、今回の連携により、多様な銘柄を「選んで集める」という新たな体験へと大きく舵を切りました。発表会で示された機能の詳細や、コインチェックが提供するBtoB向け基盤「Crypto as a Service(CaaS)」の仕組み、質疑応答で語られた提携の背景と実務への影響について詳報します。
メルカリアプリで15銘柄への大幅拡大
メルコインは2023年3月に暗号資産取引サービスを開始して以来、メルカリアプリの利用者が不要品を売却して得た売上金(メルペイ残高)を使って、1円から暗号資産を購入できる機能を提供してきました。これまでは、初心者が迷わないように銘柄をビットコイン、イーサリアム、エックスアールピー(XRP)の3種類に絞り込んでいました。

今回の発表により、新たにドージコイン、シバイヌ、ビットコインキャッシュ、チェーンリンク、サンド、アバランチ、ステラルーメン、ポルカドット、ディセントラランド、ライトコイン、ザ・グラフ、ペペの12銘柄が追加され、合計15銘柄の取引が可能となりました。
追加された12銘柄の取引は、コインチェックとの業務提携に基づく「連携口座サービス」として提供されます。ユーザーはメルカリアプリのUI上でこれまで通りシームレスに操作できますが、実際の取引相手方はコインチェックとなり、購入した暗号資産の分別管理もコインチェック側で行われます。
初心者層の開拓から「もっと持ちたくなる体験」へ
メルコイン代表取締役CEOの中村奎太氏は、これまでの戦略の成果として、サービス開始から約3年で累計口座開設数が400万口座を突破したことを明らかにしました。利用者の約85%が暗号資産取引の未経験者であり、年齢層も18歳から50歳以上まで偏りなく分布しているといいます。

「損しそう」「何となく怖い」といった心理的ハードルを下げるため、最短30秒で利用開始できる点や、すべて円表記で少数の難しい単位をなくしたUIにこだわってきた結果、国内の暗号資産口座数(約1400万口座)の拡大を大きく牽引しました。
一方で、中村氏は「誰でも持てる体験を400万口座という形で実現してきましたが、ここからはもっと持ちたくなる、ワクワクする体験へとアップデートしたいと考えています」と述べました。これまでは暗号資産を決済や買い物に利用するという入り口を提供していましたが、今後は各銘柄の成り立ちや技術的背景(Web3インフラ、ゲーム連携、コミュニティの熱量など)を知り、自分の興味に合わせて銘柄を選んで集める楽しさを提供するフェーズ(第2フェーズ)へ移行するとの方針を示しました。
UI刷新と「選ぶ・集める」楽しさの提供
新たなフェーズへの移行に伴い、メルカリアプリのUIも大きく刷新されました。従来のアプリ画面では、「現在の運用額」と価格のチャートが大きく表示され、売る・買うのシンプルな導線となっていました。
しかし、15銘柄へと大幅に増えることに伴い、「一目見て自分の好きな銘柄を選び、一覧できるコレクションのようなUI」へと変更されています。画面上部には各銘柄のアイコンが並び、保有している銘柄がカードビュー形式で一元管理できるデザインになっています。

中村氏はこの点について、「従来の証券アプリのような販売所・取引所の複雑な画面を作ることはあえて避け、メルカリのユーザーが直感的に『自分の集めたコイン』を楽しめる体験にこだわった」と強調しました。購入する際の効果音やアニメーションなど、視覚的なワクワク感を持たせる演出も追加されています。
また、今回追加される銘柄に関連して、初回購入キャンペーンも実施されることが発表されました。指定された期間内に初めて対象暗号資産を購入したユーザーに対して、200円分のメルカリポイントが付与されます。
- 第1弾:ドージコイン(2026年6月18日〜7月1日)
- 第2弾:シバイヌ(2026年7月2日〜7月15日)
- 第3弾:ペペ(2026年7月16日〜7月29日)

このようなインセンティブを通じて、これまで主要3銘柄しか触れてこなかったユーザーに対し、新たな銘柄を「選んでみる」きっかけを提供する狙いがあります。
コインチェック「CaaS」によるAPI連携と実務フロー
今回の連携をシステム面で支えるのが、コインチェックが新たに本格展開するビジネス基盤「Crypto as a Service(以下、CaaS)」です。
コインチェック取締役社長執行役員の井坂友之氏は、CaaSについて「コインチェックの暗号資産の機能をAPIを通じてパートナー企業のアプリに埋め込む仕組み」と説明しました。CaaSを利用することで、パートナー企業(今回はメルカリおよびメルコイン)は、自社ブランドのアプリ内で暗号資産の売買機能や残高表示を提供できます。エンドユーザーが接するフロントエンドはメルカリ・メルコインですが、バックエンドの取引処理や資産のカストディ(保管・管理)はコインチェックが担うという構造です。

ユーザーの操作フローとしては、メルカリアプリの「すべて」の運用額画面から新たに追加された銘柄を選択し、メルペイ残高などを利用して購入金額(1円から可能)を入力し、購入を実行します。裏側ではAPIを通じてコインチェック側で約定処理が行われますが、ユーザー体験としては別のアプリを開く必要はなく、メルカリアプリ内で完結するよう設計されています。
2026年6月施行の法改正が後押しする市場環境
コインチェックがCaaSの提供を本格化させる背景には、制度上の大きな変化があります。井坂氏によると、2026年6月に施行された「改正資金決済法」により、暗号資産の売買・交換の仲介(媒介)を行うための要件が緩和されました。

従来、暗号資産の仲介業を行うには「暗号資産交換業」のライセンス登録が必須でしたが、法改正後は「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の登録でも仲介が可能になりました。これにより、幅広い事業者が自社サービスに暗号資産取引の機能を組み込みやすくなりました。井坂氏は「国が率先して新しいビジネスを推進してくれているのは大変ありがたい。我々のような長年技術を培ってきた事業者がノウハウとAPIを開放することで、暗号資産関連のビジネスが多く生まれてくる」と説明しました。
今回のメルコインとの連携は、暗号資産交換業者同士の深いレベルでのシステム統合(KYCや口座連携を含む)であり、CaaSの導入フェーズとしては最も踏み込んだ形での実装となっています。
なぜ自社開発ではなく外部連携を選んだのか
メルコインはすでに自社で3銘柄を取り扱う取引システムを運用していますが、追加の12銘柄についてなぜ自社開発ではなくコインチェックの基盤を採用したのでしょうか。
質疑応答でこの点を問われた中村氏は、最大の理由として「運用とセキュリティ基盤」および「スピード感」を挙げました。中村氏は「銘柄を増やす機能自体は簡単に作れる部分もありますが、これから多数の銘柄を取り扱うにあたって、それらを守るためのセキュリティ基盤や組織を自前で大きくしていくのはコストと時間がかかります。スピード感と安全性を両立させるために外部連携の道を選択しました」と述べました。
また、井坂氏も「我々が蓄積してきたセキュリティやアンチマネーロンダリングのノウハウと、メルカリグループのセキュリティチームの知見という、異なるアプローチで蓄積したものを掛け合わせることで、より高い安全性が担保できる」と補足しました。
質疑応答で示された責任分界とスプレッドの取り扱い
利用者の観点で注意すべき点として、今回の連携による取扱銘柄間の仕様の違いがあります。既存の3銘柄(ビットコイン、イーサリアム、XRP)については、引き続きメルコインが直接管理・運用を行い、メルコイン独自のスプレッド(取引コスト)が適用されます。一方、新たに追加された12銘柄については、取引の相手方がコインチェックとなるため、原則としてコインチェック側のスプレッドをベースとした価格が提示されます。
事業としての収益構造について中村氏は「コインチェックさんが提示するスプレッド収益のシェア(分配)が、今回の事業のコアな部分になる」と説明しました。
また、万が一のシステム障害やインシデント時の責任分解についても質疑応答で言及されました。バックエンドの資産管理はコインチェックが行うものの、ユーザーから見ればメルカリアプリを通じて取引を行っている状態です。中村氏は「我々が媒介としてユーザーへの一次的な説明責任を負う形になります。対象となる12銘柄の資産はコインチェック内で分別管理されていることを、アプリ内の画面や注意事項を通じてしっかりとユーザーに理解していただく作り込みを行っています」と述べました。
なお、本サービスを利用するにはメルコインの暗号資産取引口座を保有した上で、メルカリアプリを通じてコインチェックの連携口座の申し込みを行う必要がありますが、すでに自力でコインチェックの口座を開設済みのユーザーは、現在の仕様ではこの連携口座を新たに申し込むことはできないという制約が示されました。
暗号資産の「金融商品」化と今後の業界連携
今回のメルコインとコインチェックによる提携は、両社の月間アクティブユーザー数(MAU)を合算すると、国内の暗号資産ユーザーの約半数にリーチできる規模となります。
さらにマクロ環境として、2026年4月には「金融商品取引法」の改正案が閣議決定され、一部の暗号資産が初めて「金融商品」として規制対象に位置づけられました。今国会で成立すれば2027年度に施行される見通しであり、インサイダー取引の禁止や情報開示義務が課されるなど、業界全体がより健全で透明性の高い市場環境へと移行しつつあります。
両社長は、法改正による規制強化や運用コストの増大を背景に、今後は一社単独で全システムを構築するのではなく、API連携やパートナーシップを通じた業界全体の再編と効率化が加速するとの見方を示しました。
井坂氏は「今回はあくまで12銘柄からのスタートですが、お客様のニーズに合わせて機能や銘柄を段階的に拡張していきたい」と展望を語りました。CaaSによる裏側の統合と、使い勝手を損なわないフロントエンドの分業というモデルが、法改正後の暗号資産ビジネスの実装形態としてどのように機能していくのか、今後のシステム稼働状況とユーザー動向が注視されます。

発表日時: 2026年6月8日
関連URL: https://about.mercoin.com/news/20260608_mercoin/
