☑️ 2026年1月29日より先行35店舗で開始、有資格者が口座開設や設定を無償支援
☑️ 通信キャリア代理店が金融サービス仲介業を取得し対面案内する業界初のモデル
☑️ NISA認知者の過半数が未利用という現状打破へ、相談場所不足の解消が狙い

「NISAは知っているが始められない」層へのアプローチ
NTTドコモとマネックス証券は、ドコモショップにおいてマネックス証券の証券総合取引口座などに関する対面サポートを、2026年1月29日(木)より開始すると発表しました。この取り組みは、ドコモショップを運営する代理店が「金融サービス仲介業」のライセンスを取得した上で行われるもので、通信キャリアのショップスタッフが証券口座の開設案内を行うのは業界初の事例となります。
両社は2024年1月の資本業務提携以降、「dカード積立」や「かんたん資産運用」など、資産形成サービスの連携を深めてきました。今回の対面サポート開始の背景には、新NISA制度開始から2年が経過してもなお解消されない「認知と行動のギャップ」があります。

ドコモとマネックス証券が共同で実施した「NISAに関する意識調査」によると、NISA制度自体の認知率は78.4%に達しているものの、その内容まで理解している層は約3割(26.8%)にとどまり、実際に利用している人は約4割(44.9%)でした。NISAを知っていても利用していない層が過半数(55.1%)を占めており、利用意向があるにもかかわらず「1年以上前から利用したいと思っているができていない」人が半数以上(52.5%)存在することが判明しています。

この「あと一歩」を踏み出せない最大の要因として浮き彫りになったのが、相談環境の欠如です。調査では、NISA未利用者の82.6%が「身近にNISAの相談ができる場所がない」と回答しており、約5割が「気軽に相談できる場所が必要だ」と感じている実態が明らかになりました。
ドコモ執行役員の田原務氏は記者説明会において、資産形成に踏み出せない層が抱える「相談相手がいない」という課題を解決するため、ドコモショップという日常的なリアルな接点を相談の場として活用する意義を強調しています。
業界初の代理店連携スキームと具体的な支援内容
本サポートの最大の特徴は、ドコモショップを運営する代理店(開始当初はコネクシオ)が金融サービス仲介業の登録を行い、証券外務員資格を取得したショップスタッフが対応する点にあります。

従来のネット証券は、手数料の安さや利便性が強みである一方、「対面サポートがない」ことが初心者にとって高いハードルとなっていました。マネックス証券の清明祐子社長は、ネット証券が解決できたのは「店舗で高コストな商品を売りつけられるのではないか」という不安の解消であった一方、顔が見えないことによる「漠然とした不安」や「何から始めればいいかわからない」という悩みには応えきれていなかったと指摘しています。今回の取り組みは、ネット証券の利便性と、対面店舗の安心感を融合させる試みとなります。
ドコモショップで提供される具体的なサポート内容は以下の5点です。
- 証券総合取引口座の開設:スマートフォンの操作や本人確認書類(マイナンバーカード等)の読み取りなどをサポートします。
- NISA口座の開設:制度の概要説明を含め、NISA口座開設の手続きを支援します。
- 「dカード積立」の各種設定:dカードによるクレカ積立の設定をサポートし、ポイント還元のメリットを享受できる体制を整えます。
- dアカウント連携の設定:ドコモの経済圏と連携させるための設定を行います。
- 「かんたん資産運用」の操作・設定:初心者向けアプリの操作方法を案内します。

また、昨今増加しているフィッシング詐欺などの金融犯罪対策として、多要素認証やパスキーの設定など、セキュリティに関する設定サポートも行われる点が特徴です。
これらのサポートは無料であり、顧客自身のスマートフォンを用いてスタッフが操作を案内する形式をとります。ただし、あくまで「口座開設」や「設定」のサポートに主眼が置かれており、具体的な個別商品(特定の投資信託や株式銘柄など)の勧誘や推奨は行われません。個別商品に関する問い合わせについては、マネックス証券のコールセンターなどの専門窓口を案内する体制となっています。
経済アナリストが指摘する「3つの壁」と心理的ハードルの解消
記者説明会に登壇した経済アナリストの馬渕磨理子氏は、NISA普及における課題として「地域格差」「年齢格差」「若年層の誤解」の3点を挙げています。
第一に地域格差について、NISA口座開設率は東京都が32%であるのに対し、青森県などの地方では15%程度にとどまるなど、都市部と地方で情報の届きやすさに差がある現状があります。全国展開するドコモショップが窓口となることで、地方における相談拠点の不足解消が期待されます。
第二に年齢格差です。50代・60代のNISA保有率は20代・30代に比べて低く、「今からでは遅いのではないか」と考える層が一定数存在します。第三に若年層の誤解として、「まとまった資金がないと投資はできない」という思い込みがあります。
馬渕氏は、窓口での対面相談がこれらの誤解を解く鍵になると指摘します。「少ない金額からでも始められること」や「ポイントを使って投資体験ができること」を知るだけでも心理的ハードルは下がるとし、特に日本人が抱きがちな「少額で相談に行くのは恥ずかしい」「知識がない状態で窓口に行くのが怖い」という心理的障壁を取り除く上で、携帯電話の手続きのついでに相談できるドコモショップの役割は大きいと述べています。
また、田原氏は、dポイント(期間・用途限定ポイント含む)を使った投資体験が、現金を使うことに抵抗がある層にとっての良い入り口になると説明しており、生活に密着したポイント経済圏との連動が、投資アレルギーの払拭に寄与すると期待されています。
展開スケジュールと今後の展望
本サービスは、2026年1月29日より、コネクシオが運営する全国35店舗で先行スタートします。対象店舗は東京都内のほか、北海道、東北、中部、近畿、中国、九州など各地域に点在しています。
初期段階での店舗数が限定的である理由について、マネックス証券の清明氏は、代理店ごとの金融サービス仲介業の登録が必要であること、およびスタッフが証券外務員資格を取得する準備期間が必要であることを挙げています。ドコモ側は早期に100店舗規模への拡大を目指し、将来的には約1000店舗規模への展開を計画していることを明らかにしました。
マネックス証券は1999年の創業以来、テクノロジーを活用した資産形成の民主化を掲げてきましたが、2020年以降は「アセマネモデル(顧客の資産増にコミットするモデル)」への転換を進めています。清明氏は、店舗を持たないネット証券がドコモショップという対面の場を得ることで、これまでリーチできなかった「漠然とした不安を持つ層」にアプローチできる点に強い期待を示しています。

通信と金融の境界がなくなる中、ドコモショップは単なる携帯電話の販売拠点から、生活全般の課題解決、そして資産形成の「駆け込み寺」としての機能を強化していくことになります。今回の提携は、貯蓄から投資への流れを地方や高齢層を含めた幅広い層へ波及させるための、重要な社会インフラの転換点となる可能性があります。
